トッケビ2次続編2 第21話 会えないはずの人と

「大丈夫か?」
神父はシンの向こうで石碑にもたれている死神に声をかけた
「はい・・・」
怪我をしているからというより、少し気まずく感じているようで、神父と目を合わさず返事をした
 
「心配ない、シンは死んだわけじゃないから」
そういいながら倒れこんで気を失っているシンの身体を仰向けにして胸元を確認した
「傷ひとつ残っちゃいない」
神父も少し心配はあったようで、安心したようにいった
 
「目を覚ましそうにはないな、、、
死神、お前は動けるのか?こいつを担ぐの手伝えるか?」
「はい・・・」
「はいって、お前、腕折れてるだろう?」
神父はわざとそう聞いて、笑いながら話した
「・・・僕は無理ですが、下に彼女がいます」
「え?ここへ連れてきてるのか?」
「はい、下で待つようにいってます」
「そうか、、シンに剣を刺すところを見られなくてよかった・・
ただ、どう説明するかだなあ。。」
 
「プルプル・・・ブルブル・・・」
その時、入り口の階段の下の方から小さな音でスマートフォンのコール音が聞こえた
その音はちょっとずつ、二人の下へ近づいてきた
二人がその音の先を見ると、下で待っていたはずの死神の彼女が階段を上がってきていた
 
彼女は彼氏の姿を見つけると、
「ごめん〜、下で待つように言われたんだけど、箱の中のスマートフォンが突然なりだしたもんだから・・・
!!! なんでそんなボロボロなの?
!!! シンさん! シンさんが倒れているじゃない!!
一体どうしたの!!」
 
「いや、、、それは、、その・・・」
彼氏は折れた方の腕を自分でささえて答えに迷っていた
「ちょっと、あなた!怪我してるんじゃない?」
「ああ、ちょっとね・・・」
 
彼女はもう一人の男に気がついた
 
「あれ?神父さん?神父さんよね?」
彼女は神父がいつものメガネをかけていないので、念のため確かめるように聞いた
「ああ、そうだ・・・それは、、」
神父は状況の説明の仕方に戸惑っているより、彼女が手に持っている木箱が気になった
 
「どうして、君がそれを持っているんだ?」
「・・・え?これ?、あ、預かったのよ知り合いから」
彼女は神父がいつもと違う口調に少しびっくりしながら答えた
 
「そうそう、この箱の中から急に音がなったの」
そういって、箱の蓋をあけて神父の方へ向けた
 
「突然鳴り出したの!ついさっき!」
彼女は目の前の状況も把握できず、パニクっていた
 
死神も神父のそばに寄って、中を見た
電源が入らないはずの箱の中にある2つの同じスマートフォンのうちの一つが鳴っていた
それは神父が昔、トッケビであった頃に使っていた方のスマートフォンだった
 
神父は箱の中で裏返しになっているそれを手に持つと、画面に出ている表示を見た
 
「SUNNY」
 
(サニー?)
 
そこには、連絡先として登録されていたであろう、サニーからの着信を表示していた
もう、数十年前に亡くなった祖母、サニーからの着信だった
神父は少し考えてから、その電話をとった
 
「もしもし?」
神父は慎重に確かめるように尋ねた
「もしもし!もしもし!、本当にあなたなの?」
電話に出たのは少し年配の女性の声だった
それは、間違いなくサニーだった
 
「・・やあ、久しぶりだね、誰だかわかるかな」
「わからないわけないじゃない・・・・」
サニーはその電話の相手が、自分が剣を抜いた人だとすぐにわかった
 
「今どこにいるんだい?病院かな?」
「誰から聞いたの?私、もういい歳したおばあさんだもの、最近体調が悪くて入院しているのよ」
 
サニーは病院のベッドで、大粒の涙を流していた
 
「そうか、どうだいあれから、不便はなかったかな?幸せだったかい?」
「ありがとう、おかげさまで、とてもいい人生よ」
 
「そうか、それは良かった。。本当に良かった」
「あなたはどうなの、私が剣を抜いてから消えちゃったけど、もしかして、まだどこかにいるの?」
 
「いや、いないさ、あのまま消えたよ
今の俺は、、、人として暮らしているんだ」
「そうなの?近くにいるの?」
 
「いや。。。。近くにはいるが、今の俺は遠いかな、、」
「そう、、、でも、あなたの声をちゃんと聞けて嬉しいわ
あの時、あなたの声が戻ってから、ほんの少し話せただけだったもの。。嬉しいわ」
 
「ああ、俺もさ」
「・・・」
すこし沈黙ができた
サニーがすすり泣いているのを、神父も気がついている
 
「このままいいかい?君に言いたい事があって」
「何?」
 
「あの時は、本当にありがとう おかげで俺は生まれ変われて、楽しくやっている」
「生まれ変わって? あら、それは良かったわ」
 
「それと・・」
「それと?」
 
「次の君の人生は、今よりももっとハッピーだよ」
「今よりも?まだこれ以上に幸せなんて、それは朗報だわ」
 
「ああ、最高にハッピーさ
元彼も元気でやっているしな
また会うのを楽しみにしておいてくれよ」
「元彼?・・あ、死神さんの事ね フフ、ええ、楽しみにしておくわ」
 
お互いのスマートフォンから充電切れの警告音が鳴り始めた
 
「長くは話せないようだな、、身体大事にな」
「ええ、あなたも
人としての人生を十分に楽しんでね」
 
神父はその言葉を聞いて、瞳が涙で滲んできた
 
「ああ、楽しむさ!」
「今度いつかまた、話せるかしら?」
 
「どうだろう、、ただ、俺はもう君のそばに居るかもしれない」
「え?私のそばに?」
 
「小さいけどな
そいつが話せるようになったら、また、いろいろ教えてやってくれ」
「そうなの?・・もう会っているのね!」
 
神父は自身が生まれ変わって、サニーの孫として生まれている事を暗に伝えた
 
「じゃあ、また」
「ええ、また会いましょうね」
 
そういい終わると、お互いの電話が同時に自然と切れた
 
(こんな事が起こるなんて、私、もう死ぬのかしら)
サニーは満足そうにベッドの上で天井を見て笑っていた
 
「神様、ありがとう
また、会えるのね」
そういって、ゆっくりと目を閉じた
 
神父はそばの彼氏と彼女に背を向けて、片側の目からこぼれた涙をふいた
 
電話をしていた神父をみていた彼氏は、彼女のそばに行き、肩をぐっと寄せた
「ねえ、神父さんは誰と話をしていたの?」
「・・・君だよ」
「私??」
「ああ、君だ、、ずっと昔のね」
「・・・」
 
彼女は彼氏の答えの意味は分からなかったが、なぜかこれ以上聞かなくても良い気がして、手に持った木箱を胸にギュッと抱えて黙ってそっと、彼氏の方にもたれた
 

ブログ村 韓ドラ二次小説

 

次話

310sh1.hateblo.jp

 

最初
第1章