トッケビ2次続編2 第8話 死ねないという事

二人の後を追った彼氏は、歩きながら不思議な感覚でいた
「この家・・」
何かを探すように歩いている自分に気がついた
「この向こうは確かキッチン・・・」
そう言って入った角は、キッチンだった
覚えていないはずの過去世・死神であった頃、シンと二人で並んで調理をしていたキッチンだ
「・・・・なんだろう、懐かしい感じがするな」
そのまま少し歩き、別の部屋の前で立ち止まった
そこは、死神であった頃に使っていた部屋だった
「俺の・・部屋?」
そういって、部屋のドアをあけた
そこは何年も使っていない部屋のようだった
ただ、彼氏には何もないはずの部屋の壁に細かく仕切られた大きな棚が見え、そこには丸められた書類がたくさん入っており、置かれていたであろうテーブル、椅子の形、ベッドのシーツの色までが頭に浮かんできた
「どうかしてしまったんだろうか・・・」
彼氏は少し怖くなり、その部屋を後にした


「おい、どうして妹の素性を黙っていたんだ、血縁じゃないのか?」
「え?だって、聞かなかったじゃないか」
シンと神父はドクファの寝室に入り、少し口論になっていた
「あいつは俺が初めて教会に来たときには、すでに居たんだよ
それに、まだあいつがお前の花嫁だったかどうかなんて、確信はないんだ
似てるだけかもしれないだろう」
「似てるだけ?このメンツで揃ってて他人なわけないだろう、お前・・・、そういう所は昔から間抜けだよなあ」
シンは少しあきれていた


「二人ともずっと昔から知り合いなんだね」
ドクファは仲裁するかのように、口をはさんだ
老人は、二人の会話を聞きながら少し嬉しくなっているようだった

「シンおじさん、なんだか死神のおじさんとののやりとりを見ているようで、懐かしいよ
結局、仲良しなんだよね」
二人はそれを聞いて、照れ臭そうに言い合うのを止めた

 

「僕はね、神父さんの妹さんはきっと、あのウンタクさんだと思ったよ
絶対に」
ドクファはシンに、疑いのない目で力強くそう言った
「似ているとかそういうのじゃなく、当人でしかないよ
ほんと、僕の周りは不死身の人ばかりだね、おじさん」

「はは、そうだな。。」
シンは一言だけ返した


「それにしても長生きだよな、お前、いくつになったんだ」
神父は深刻になりそうなシンを見て少し話を変えようと、ドクファに話かけた

「そうだね。。。たしか百・・・120歳くらいまでは覚えているんだけど、それ以上だよ」
「120!?あり得ないな、もう人間じゃないよな」
「おい!、お前もうちょっとなんか言い方あるだろう」
シンはまた、怒りだした

「ああ、すまんすまん、俺はこいつの事を若いときからずっと知っているから、ついつい・・なあ、シン、そうかりかりするなって」
神父は軽く、詫びた

 

「全然!いいんですよ
だって、神父さんの今のその口調・・やっぱり懐かしい気がするし、シンおじさんと一緒で僕より随分と年上の気もするから
ねえ、神父さんももしかして、シンおじさんと同じトッケビなんですか?」
ドクファはシンの全てを知っているだろう事は、神父も想像が難しくなかった

 

「いや、違うよ
正確には昔はトッケビだったんだ、今はお前と同じ人間だよ」
そういって、前世の記憶を最近思い出したこと、これまでの事もできるだけ説明した


「そうだったんだ、、、じゃあ、さっきの死神のおじさんに似た人はどうなの?
あの人も、どう見ても本人にしか見えないんだけど・・」

今度はシンが答えた
「あいつも人さ、ただ、あいつは前世の記憶は何もないんだ
純粋に現世の人だよ」
「そっかあ、僕的にはそれは少し残念だな、」

 

シンはその時、寝室の空いた扉の向こうに人の気配を感じた

「いいよ、入ってきても」
シンはドアの向こうにいる人にそう、声をかけた
神父と老人もその方向を見た

入ってきたのは、二人を追っかけてきた彼氏だった

 

「お前、ずっとそこにいたのか?」
神父が尋ねた
「あれ??神父さん?、いえ、何かお手伝いをしようと思って、今来たところです
驚かせてスミマセン」

神父は眼鏡を外しており、神父用とは違う口調でつい、話しをしてしまった
彼氏は別人のような神父に驚いているようだった

「これな、素の俺なんだ、騙すつもりはないんだ
他の奴には内緒にしておいてくれ、ほら、俺、一応は神父って役割だから・・」
「は、はい、わかりました」
彼氏は神父が仕事のために神父らしく演じていたとしても、それに対して不快感も何もなかった

それよりも今、目の前の感じの方が自然で好意的に感じられた

 

「あ〜、本当に今日は特別な日だよ、皆にまた会えたんだから」
ドクファはベッドに横たわりながら、本当に幸せな表情をしていた

「シンおじさん、、僕も神父さんみたいに素で話をしても良いかな」
そう少し冗談まじりに話はじめた

 

「実はね、僕、ずっと長く生きている自分が嫌いだったんだ
何もする事がないし、自由に動けないから何もできないし。。。
周りは長生きできて幸せだと思っているかもしれないけど、本当は辛いんだよねスゴく・・
寝たきりになってからの楽しみといえば昔、自分が若かった頃の楽しかった事を思い出して、懐かしがるしかなかったんだよね
ただ、それにも慣れてきまってしまって、空白の時間が多くなってきているんだ
自分がいつ寝て・起きているかも正確にはわからなくなっているんだよ
だからその思い出としている事もなんかさ、もう、現実だったのか、いや夢なのかもしれないと思うようにもなってしまってさ」

 

ベッドの周りの三人は、黙って話を聞いていた

 

「シンおじさんはどうなの?長く生きてて辛くはなかった?」

神父と彼氏はシンの方を見て、どう答えるか待った

 

「・・・そうだな、俺の場合は長生きというより、歳をとらない辛さ、、、、人より多く別れを経験しないといけない事が辛い時はあるよ」

神父はそれを聞いて、自身もつい最近までトッケビであったので、思い出すかのように共感していた
彼氏の方は、常識では考えられない話をしている事も理解しながら、なぜか冷静に納得している自分にも気がついているようだった

 

「じゃあ、僕はやっぱり、シンおじさんを悲しませないために、まだ長生きしないとね」
シンはそれを聞いて、微笑みながら、老人の頭を軽くなでた

 

「今日、わかった事があるよ」
ドクファは、普段より元気に話をしているように見えた

「この日のために、ずっと生かされていたんだなあって
やっぱり僕の思い出は全部、現実だったんだって、わかってさ
何より今この瞬間、大好きな人達がすぐそばに居てくれてるんだから、それが嬉しくてたまらないよ」

 

「そうだよ、ドクファ
人生の幸福に長さや量なんて実は関係がないんだ、はかれるものでもないんだよ

全てはかけがいのない大切な事で、しかも目の前にあるもんなんだよ
過去の思い出も大事にするべきだけど、優先しなければいけないのは今なんだ

俺はずっと、そう思って生き続けているよ」


ドクファをそれを聞いて目をつむり、涙を流した

 

「今日はちょっと刺激的すぎたかな、ゆっくりお休み、ドクファ
また、皆でくるよ」
そう言って、3人はそろって部屋を出た

 

 

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