トッケビ2次続編 第12話 罠
(何か変だ)
=男はいつもと違う空気を感じていた
=シンの軍隊は王のいる王宮に向かっていた
=いつもなら勝利を祝い、シン達をねぎらう出迎えがあるはずなのに、誰もいない
=馬をおりて先頭を歩くシンに、男はかけよった
おいシン、何かおかしいぞ
=男はシンの顔をみた
=シンは黙って前を凝視していた
=周りの重臣達も同じように前を見ていた
=なぜか、先頭にいる全員が戦っている最中と同じ目付きをしている
=男は前をみた
=王宮まで道の、最後の曲がり角の壁の向こう側から
=異様な数の殺気を感じる
(この向こうに敵がいる・・)
=男達は何度も戦場を経験してきているので、見えなくてもそれがわかるのだ
シン、引き返そう
=男はシンに提案した
王には俺が話すから
=シンはそう一言答えただけで、歩みは止めない
=いつもは男のシンに対する態度を叱っていた重臣も、黙って二人の話を見ている
バカかお前は!この状況で何を話せるというんだ!
=態度を変えないシンを見て、男はそう吐き捨てると、
=後ろに控えている馬番からシンの馬のたずなを引ったくり、
貸せ!
=槍持ちからも槍を取り上げ、もう片方の手で鞍をつかむと、馬に飛び乗った
俺は家に向かう!
=男はそういって走り去った
(あいつなら、何人かは助けてやれるかもしれない・・)
=シンも男と同じ、心配をしていた
=男を見届けると、シンは足を前に進めた
=男の馬は早かった
=まるで、自分の馬のようだった。
=周りの兵士達も、走り去るその鮮やかな姿に見とれていた
=馬で走って間もなく、家の方角から黒い煙が上がっているのが見えた
(間に合ってくれ!)
=男は何度も馬の腹を蹴った
=・・・家が燃えている
=男の心配は現実になっていた
=その前で3人の兵士が手に火種を持ち、ひと仕事終えたかのように世間話をしていたのが見えた
お前ら!何をやっているんだ!!
=3人の男はその怒号に驚いた
=男は馬上から槍を持つ手を返し持ち、振りかぶると一人の兵士に向かって投げつけた
=その槍は、兵士が男の声に気がついて振り返る間もなく、兵士の身体を貫いた
=男は次に馬から飛び降りると、両脇の剣の1本を抜きながらもう一人の兵士に向かっていった
=兵士も自分の剣を抜いたが、その時にはもう、男が振り下ろした剣が視界に入っていた
=男はその兵士の頭を防具の上からカチ割った
(あと一人!)
=男は持てるすべての殺意を3人目の兵士に向けた
=最後の兵士は、自分の剣の柄をつかんだまま抜けずにいた
=手は震え、そのまま悲鳴を上げて逃げた
=男は追わなかった
=刃がほころびた剣をその場に捨て、燃える家の中に入っていった
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