トッケビ2次続編 第22話 無我
=男は暗い場所に浮いていた
=上も下も、奥行きもわからない空間にいる
俺、死んだのか?
俺はもう、なくなるんだよな?
=男は自分の存在が消える事を自覚しながら、その場所で赤い服の女と対峙している
=女は黙っている
最後の頼みを聞いてくれないか?
サニーの中の現世での俺の記憶は全部消してくれないか
シン達と再会した時に、俺はいない方が良いと思うんだ
余計な仕事を引き受けさせてしまったし、辛い思いは忘れちまった方がいいだろうから・・
あら?前とは違う事を言うのね
それがあなたの望みなの?
=女は逆に質問した
=男はそう聞いた後、すぐに女がなぜ問い返したかが分かった
=男はシンの刀が抜けたその時、女には花嫁の記憶を消さないで欲しいと頼んでいた
=今、自分が消える時になって、その逆の事を願っている
シンもあのとき、そう思ったのか?
あれは、シンが頼んだ事だったのか・・・
=男はシンの花嫁が記憶を失ったのは、シンがそう願ったからだと今、理解した
=男は鼻で自分の事を笑い、少し悔しそうだった
あのさあ。。。
=男は親しげに、話を続けた
相手の気持ちなんてのは、自身がまったく同じ経験をしないと本当はわからないもんだと今分かったよ
相手の事を想像してもそれは、あくまで自分本位であるって事はその瞬間は分からないんだな
誰よりも相手の事を思い、慕うってのは、難しい感情だよ
愛だとしているその行為は、相手や周りにはどう映っているかなんて、本当のところはわかりはしない
=男は人として死んだ時、シンの事を責め、王を恨み、サンに同情し、妹を不憫に思った「だけ」の自分が、ある意味独りよがりであったように思えた
そうね、あなたは少し言葉が足りない人だったのかもしれないわね
=女は本音であろう事を口にした
あ〜、そうか
だからシンは王と話しをすると言ったのか
=男が妹を助けるために最後にシンと別れた時、シンが歩みを止めず王と話そうとした事が、あの場合の最善策であった事を理解した
相手の行動に自分が腹を立てている時は、
やっぱり、自分の理解に何か間違いがないか先に考えないといけなかったな
=男は何かを後悔するというより反省している
結局あれからの俺の思う「善」は、自身の罪滅ぼしと勝手に考えていただけで、一方的だったか・・・・
そもそも、罰でもないし、罪なんて物も最初からないのかもしれない
俺が受けた事が罰というなら、なんのために必要だったか理解もしたよ
=男は、全てに納得したようだった
その罰が身に覚えの無い罪から作られるのなら、
神がいう愛っていうのは、、、神自身の懺悔なのかもしれないな
お前も・・何か罰を受けているのか?
=男は女に尋ねた
私は。。。。
女として存在していることが、すでに罰になっているのよ
=女は真顔だった
そうか・・・
事情は分からないが俺の次は、お前の番だな
=男は微笑みをうかべた
きっといつか、お前の前にもあらわれるだろうさ
俺でさえ、救い主がいたんだから
・・・今更だか、長い間、本当にありがとうな
じゃあな
=男はそういうと、女の胸の前あたりで小さい光の玉になった
=女はそれを、下からすくい上げるように優しく両手をそえ、
=寂しそうな顔をして、ジッと見つめていた
=少しの間の後、女は微笑みを取り戻し、光の玉になった男に向かって言った
また、会いましょう
=光の玉は、スーっと消えた
次話
最初