トッケビ2次続編2 第14話 伝えたい事

「もう、何やっているんだよ」
彼氏は駆け寄ると、少し不機嫌そうに言った


彼女はうつむきながら、恥ずかしそうに顔を上げた


「だって、何も話してくれなんだもん・・ごめんなさい、男だけで会うなんて、何かあったのか気になって仕方なくって」
「ただ、話をしただけなんだよ、本当に」
「うん、本当だった、ほんとに男だけ三人だったよね、ごめんね邪魔しちゃって・・・」
(三人・・・)


今日は前もってシンと神父と三人で会う約束があるとは伝えていたが、赤い服の女性の話だけはしておかないといけないと思って、彼氏は店の方へ振り返り説明しようとした


「そうなんだ、三人なんだけど、(・・・ん?あれ??)」


二人が見る外から見た店内のその席には、シンと神父しか見えなかった
それに、店内の他の客も、店員の姿さえもないようだった


「ほんとごめんなさい、本当にシンさんと神父さんだけなんだね、ごめんなさい!」
「あ、、いや、いいんだよ、、僕自身もちゃんと話をするべきだったよ」
彼氏は先での話を聞いて、不思議な事があってもさほど驚かなくなったようだ


「あのさ、ちょっと手の平見せて」
彼氏は彼女の両手首を持って、自分に見えるようにした
「え?何?突然・・・何も隠してないわよ」
「これ・・・・今まで、ずっと気がつかなかったな・・」


彼女の両手の平には、横一文字の傷にも見える大きな筋が入っていた


「手相?、これね、小さいころからずっとあるんだけど、大人になってから深くなってきているような気がするの・・でもね、占い師に一度見てもらったら、最高の手相だって言われたのよ
前世でとてもいい事をしたんだって、その証拠らしいのよ」

彼女は話もそらせたようで、自慢そうに言った


「ああ、そうさ、きっとそうだよ」
彼氏はそのまま、彼女を寄せて強く抱きしめた


「ちょ、ちょっと、、何、どうしたの? 恥ずかしいから・・・」
「君はね、本当にいい事をしたんだよ」

彼氏は神父からの話を聞き、彼女の手の平を見て、彼女が神父のおばあさんであるサニーの生まれ変わりである事を確信し、また愛おしくなり、強く抱きしめた


「・・・う、うん、そうなんだ・・・」
彼女は少しの時間、目をつむってそのままでいた

 


「おいおい、何いちゃついてんだ、あいつら」
神父は店の中から二人をみて、その姿に満足そうだった
「負けてられないわね」
赤い服の女はそういって、横の神父の腕をしっかりと組んだ


「ばかかお前ら・・」
シンも外の二人を見て嬉しそうだったが、目の前の女の態度をみてしらけて見せた

 

「じゃあ最後にしっかり聞こうか、お前の妹の話」
シンは神父の目をみて、問うた

 

「彼女があなたの花嫁の生まれ変わりであるかどうかって事?」
先に赤い服の女が話はじめた


「あなたにとって、彼の妹が生まれ変わりかどうかが、そんなにも大切な事なのかしら?
もしかしたら、たとえ生まれ変わりであっても、あなたの花嫁かどうかはわからないのよ
それでも、あなたは知りたい?」

「いや、花嫁かどうかとか、そういう事ではないんだ・・」
シンは女の方へ視線をかえた

 

女は薄笑いをうかべ
「あなたのその胸にはもう、抜く剣も刺さっていないのに・・・

いえ、意地悪する気はないのよ
私はね、あなたが何を知りたいかを理解しておきたいのよ
その理由を知りたいのよ
私には、ただあなたが戸惑っているようにしか、見えないから」

 

「・・・ああ、そうさ、どうするのが一番いいのか、わからない」
シンは少し、視線を落とした

 

「冷たいようだけど、期待しないほうがいいわよ
彼女だけじゃなく、あなたにとっても、今ここにある事が全て現実なのよ
もし、過去の後悔や過ちを、現在の誰かではらそうなんて、よい考えでは無いと思うわ

「いや、そうじゃないんだ。。。確かに後悔はあるよ、ずっと・・・
どうしてあの事故の時、そばにいてやれなかったのか、どうして彼女が死ななければならなかったんだって、ふと思い出すたび悔やんでいる・・・」


「なら、彼の今の妹にはどうしたいの?」
女は黙って答えを待った

 

「分かっているさ、彼女がもし生まれ変わりであっても、外見が同じでも、たとえ記憶が戻っていたとしても、現在の彼女の感情までが過去と同一ではないと・・・
ただ・・・死んでしまった人がまた、同じ姿で自分の目の前に現れた事で、どれだけ・・・どれけ死んだ彼女を愛していたか、思い出しているんだよ
彼女がトッケビの花嫁であるかどうかなんて、関係はなかったんだ
彼女が花嫁であった事は、ただのきっかけだったんだとな」

 

「そう、、それは花嫁が生きている時に伝えるべきだったわね」
女はずっとシンの方をジッとみて、話をしている

 

「そうだな、俺はバカだよ
もし、彼女が生まれ変わりで過去の自分を覚えているなら、、、
俺がずっとそう思っていると、それだけは伝えたいと思うよ」
シンはそういって、冷めたコップのお茶を一口飲んだ

 

「おい、もうそれくらいにしといてやれよ
なんだか、責めているみたいじゃないか」
ずっと話を聞いていた神父が口を開いた

 

「あら?そう聞こえたかしら?それは失礼、ごめんなさい
ただ、私はあなたが彼の妹を最初から花嫁の代わりだとは思って欲しくなかったのよ」

 

「ああ、そんな事は考えていないさ、こいつの妹をかわりにしようなんて、とんでもないさ
もう何十年も経っているのに過去の人に未練がましく、いい歳だし気恥ずかしいくらいだ

彼女は事故で死んだが、それは人として寿命を終えただけの普通の事なんだと言い聞かせている自分をな」
そういって、軽く自分を笑った

 

「良かったわ、今日、あなたと話せて
あなたが、花嫁の事をどれだけ愛していたかは、十分に分かったわ
じゃあ、そろそろ私も失礼するわね」

 

「え?もう帰るのかよ?もうちょっとゆっくりしていけよ」
神父も女と会うのは久しぶりだったのか、少し残念そうだった


「あなたたち二人だけよ、いつも暇なのは」
そういって、座った姿のまま、二人の目の前で店から女は消えた

 

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